僕たちは、あの時真剣に勇者になりたかったんだ。手ちぎれるかと思ったけど笑

チャイムが鳴り

みんなが帰り支度を始める。

今日は休み前の最後の登校日。

道具箱やら体操服やら

教科書やら大荷物を

持って帰る日だ。

当然要領のいい女子たちは

日々荷物を少しずつ

持って帰っているので

両手が手提げカバンでふさがってる

男子よりは身軽に下校していた。

そして

当然ながら

僕もまた両手に手提げカバン

背中には

重さMAXのランドセルを背負って

偶然か必然か

1人家路につこうと

校門を出た。

しばらく

ふらふら〜

ふらふら〜と

うろちょろと

歩き回りながら

下校路を進んでいると

同じような小柄な背丈で

背中いっぱいにランドセルを

背負った少年たちが

遠くの方にいた。

多分違うクラスの友達やなー

友達やったら

一緒に帰れるといいなーと思って

僕は遠くに見える

その少年たちを追いかけた。

さっきまでふらふらと

歩いていた僕が

まっすぐ少年たちに向かって

走っていくと

途中で

何人かの少年たちが

“身軽”にさっきいた場所から

離れていった。

ぶわぁーっと数人が

走り出して

歩道橋を登っていく。

残された子が

たった1人だけいて

その子は

背中にランドセル

両手に手提げカバンの

標準休み前の男子装備の他に

お腹側にも

両サイドにもランドセルを

背負っていて

手提げカバンは

片手に4つずつもっていた。

当然、ほとんど動けるはずもない。

それでも、その子は

必死でみんなに追いつこうと

目一杯歩き進んでいた。

その子に段々と近づく僕に

歩道橋の上から

ほかの友達の声が聞こえた。

友達

「はよしろよ!浜ちゃん!

   遅いぞー!待ってんねんからなー!」

どうやら

浜ちゃんは、なんでかは

わからなかったけれど

みんなの分の荷物を

持たされているみたいだった。

そんな、浜ちゃんを急かす

友達の掛け声というか

野次が飛んでいる中

ようやく、僕は

少年たちが元いた場所から

そんなに離れてない場所で

全員分の荷物を持って

鬼のような顔をして

歩道橋に急いでいる

浜ちゃんに追いついた。

浜ちゃんは、

僕の家の近所に住んでいた。

クラスが違うけれど

仲が良かったので

休みの日に遊ぶこともあったし

タイミングさえ合えば

一緒に帰ってもいた。

「どうしたん?浜ちゃん。

   なんで、みんなの荷物持ってるん?」

浜ちゃん

 「なんか、罰ゲームらしい。。

    俺がみんなの荷物持って帰らな

    あかんみたい。。」

なんの罰ゲームなのか

なんで浜ちゃんがみんなの分の荷物まで

持って帰らないといけないのか

訳の分からな買った僕は

?????だった。

とりあえず、浜ちゃんが苦しそうだったので

僕は声をかけた。

「ちょっと持とか?半分とか!」

浜ちゃん

「だいじょ…う…ぶ…

    俺じゃんけん負けたし…」

どうやら

じゃんけんに負けて

全員分の荷物を持たされているみたいだった。

浜ちゃん

「あいつら、ずるいから

   後出しやってんけどな。

   ムカつくから持ってんねん。」

「そおなんかー。

    それで、こんなに荷物持って

   ここまで歩いてきたん?」

浜ちゃん

「そうやで。

   絶対帰ったらお母さんに言ったるねん。」

浜ちゃんの目には

うっすら涙が溜まっていた。

「すげーな。浜ちゃん笑

   こんなに歩いたんか。

   それは、勇者やで。」

浜ちゃん

「勇者?」

浜ちゃんが顔を真っ赤にしたまま言った。

「そう。勇者。めっちゃ強いやつな!

  こんなに歩けてんから、浜ちゃんめっちゃ勇者やで笑」

浜ちゃん

「勇者かー笑」

浜ちゃんは、まんざらでもないみたいだった。

「ちょっと、俺にも

   勇者やらせてや!!

    浜ちゃんだけずるいやん」

浜ちゃん

「どうやってー?」

「浜ちゃん、じゃんけんしよ!

   でも、絶対グー出せよ!」

浜ちゃん

「どうゆう…こ…」

「じゃーんけーん、ぽん!」

浜ちゃんは

びっくりしながら

グーを出した。

僕はチョキを出す。

「浜ちゃんの勝ちやから

  次勇者オレな!

  荷物貸して!

  俺アッコまで歩くから!!」

浜ちゃん

「アッコまでは無理やろー笑

   荷物持ってくれるん?」

「荷物ちょっとちゃうで

   浜ちゃんのも全部やで。

    俺勇者なるから!」

浜ちゃん

「えーーいいん?

   めっちゃ重いでこれ。

   みんなのあるし。」

「大丈夫やってー!

   俺勇者やし!」

そんなこんなで

全員分のランドセルを

小さい体に無理矢理背負って

両手が引きちぎれるくらいに

手提げカバンを持った僕。

「おっも…汗」

浜ちゃん

「やばいやろ?笑

    手伝おか?」

「だい…じょう…ぶ…」

さっきまでの余裕は

どこかに行ってしまい

僕は般若のような

顔面で

ゆらり…ゆらり…と

歩き始める。

浜ちゃん

「無理やってー…

  やめとったほうがええって

   落とすでー?」

「ゆう…し…ゃ…にな…る…か…ら…」

ここからは、浜ちゃんとの

二人三脚だった。

励ましてくれる浜ちゃん。

ゆらりゆらり歩いている僕。

周りから見たら

僕はイジメられている子だったはずだ。

でも、それは違う。

僕は勇者になるんだ笑

おろおろ…おろおろ…

なんとか歩いていると

浜ちゃんが言った。

浜ちゃん

「ここまで来られたら、俺負けたなー」

僕は俯き加減だった

頭を思いっきり持ち上げて

目を輝かせながら

浜ちゃんに言った!

「俺の方が勇者ってこと??」

浜ちゃん

「くそー笑」

僕はようやくそこで

荷物を地面に下ろした。

一息ついていると

浜ちゃんが言った。

浜ちゃん

「次俺もっかいやるわ!

  らむと、グー出してな!」

「ちょっと…きゅうけ…い

    させ…」

浜ちゃん

「じゃんけーん、ぽん!」

僕は気がつくと

グーを出していた。

浜ちゃんは

チョキを出している。

浜ちゃん

「次俺が勇者やから!」

浜ちゃんは地面から

荷物を1つずつ担ぎだす。

そしてまた

プルプルしながら

歩き出す。

そんなおかしな様子に

歩道橋の上にいた

ランドセルの持ち主である

ほかの友達たちも気がついて

近くに寄ってきた。

友達たち

「なにしとるん?」

「勇者勝負してんねん。

   こんだけの荷物持って1番歩けたやつが

   勇者やねん。 

    浜ちゃんが1回目やって、

    アッコからアッコまで歩いて、

   俺が2回目やって     

   アッコからここまで歩いてん!

   今俺が勇者!」

僕は、めちゃくちゃ得意げに言った。

友達たち

「へーすごいなー!

   俺もやるー!やらせてー」

「今は浜ちゃんの番やから無理!

   次なー」

浜ちゃんはというと、横で

プルプルしながら真っ赤な顔で

一歩ずつ進んでいた笑

さあ、ここまでくると

僕と浜ちゃんと友達たちの

我慢比べ大会になる。

一応、一回一回じゃんけんはする笑

ただ、さっきまでと違うのは

すごい量の荷物を持った人が

周りの友達に

囲まれながら

でっかい声援を浴びて

応援されているということだ。

めちゃくちゃ荷物持たされてるのに

めちゃくちゃ応援されている笑

多分この光景を見た周りの人は

イジメられているとは

思わなくて、

あの子らみんなで仲良く

何やってんねん笑

くらいにしか思っていなかっただろう。

僕たちは、誰が勇者かを決めていたんだ。

その当時は真剣に。

ただ

その辺も小学生なので

荷物を、下ろすのにも

荷物を、担ぐのにも

1人ずつ交代していくので

まあまあそれなりに

時間がかかる。

そして

残りの勇者待機チームは

応援するものの

徐々に飽きてくる。

そんな中

友達の1人が言った。

友達

「俺塾やねんけど。この後。

  まだ学校見えてるやん。

   間に合わへんかったら、

   お母さんに怒られるー

    先帰るわー」

その子は

自分の荷物を

勇者から取り上げて

走って帰っていった。

それから、他のみんなも

僕と浜ちゃんだけを残して

それぞれ荷物を持って

帰っていった。

僕らはというと…

「浜ちゃん!!めっちゃ軽くない?いま!」

浜ちゃん

「ほんまや!めっちゃ軽い!

   さっきまで、めっちゃ重たかったから

  いま軽いなー!」

「これは、浜ちゃん俺ら忍者なれるで!

   歩道橋の上まで競争な!

   忍者で!」

浜ちゃん

「ええで!」

びゅーんとか

びゅーとか

ひゅーとか

言いつつ歩道橋を駆け上がる僕ら。

あたりはもう、夕方になっていた。

浜ちゃん

「みてみて!これ忍法竜巻!!!」

そう言って浜ちゃんは僕に

手提げカバンを

ジャイアントスイングのように

振り回してみせた!

「すげーな!浜ちゃん!

   かっけーーー(๑╹ω╹๑)」

浜ちゃんの、忍法竜巻に

僕は惚れ惚れしていた。

僕も負けじと忍法を繰り出した。

「浜ちゃん!!!

   みてみて!これがおれのぉ〜

   必殺奥義ーッ!!!

   忍法ローリングサンダーぁッ!!」

僕は

両手に持った

お道具箱とかが入った

重い手提げカバンを

目一杯に

縄跳びを飛ぶように回転させた。

そしたら

お道具箱と

なぜか図書館で借りていた

「きゅうりの育て方」が

浜ちゃんめがけて

飛んでった笑

浜ちゃん

「あっぶなー爆笑」

また次回。